白はいつの間にか瞳を閉じて、夢の中だった。
黒はそれを見下ろしていた。自分の腕を見てみれば、どこが肌かも分からないほどに真赤だった。
余りに綺麗な横顔に、黒は一歩後ずさった。膝の力が抜け、木の床に倒れこむ。血はどくどくと溢れだして、紅く広がっていく。
黒は自分の右手を見つめた。しかしただ赤があるだけで、右手などなかった。
「あはは…」
そう一つ笑って、黒は死んだ。


















「……」
起き上がった白は、心底嫌そうな顔をした。
汚い。汚い。汚い。汚い。汚い。汚い。汚い。
こんな物を見ていては自分はおかしくなってしまう。
白は黒の手の中のナイフをひったくり、自分の目を刺した。無論、右も左もである。
「あはは…あはははっ あはははははははははっっ!!!」
崩れ落ちる白。



ちなみにあの本は、隣町に住む女の子が忘れていったものらしい。
あとで届けに行ってこようと思う。